HOMEへご案内夢工房ifZacca&Sweets ifにゃん心の相談室サタデーピア通信リンク集




第4回近畿SST経験交流ワークショップ・滋賀のご報告


 標記ワークショップは、東京、愛知、岡山など近畿圏外からの参加者も含め160余名の参加で、大変好評のうちに無事終了いたしました。
本大会開催にご協力、ご後援いただきました各機関、施設の皆さまには厚く御礼申し上げます。また、ご参加の皆様には会場運営等にさまざまなご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
 この出会いを大切に今後のSST実践への糧とできれば幸いです。


「第4回近畿SST経験交流ワークショップin滋賀」に参加して

2007年2月18日 ピアザ淡海(おうみ) 滋賀県立県民交流センター

 記念講演 「SSTの新しい展開〜子どものSSTを中心に〜」

奈良教育大学 岩坂英巳先生

 先生がリハビリセンターで実施しておられる、注意欠陥多動障害(AD/HD)児童を中心とした軽度発達障害児童への行動療法を中心にお話しいただきました。
 先生が実施しておられるプログラムは、「学習タイム」と「遊びタイム」の2部構成で、SSTで「場面や相手の表情を読む・誘う・尋ねる・頼む」などのソーシャルスキルの学習をした後、遊びの中で児童が学んだスキルをすぐに使えるよう工夫されていました。また、学習タイムでは、「しっかり見て・じっくり聞いて・はっきり言う」ルールと、「あてられてから話す・人の話は黙って聞く」などの約束があり、ルールの遵守によってジャッジマン(リーダーとは別のスタッフ)からポイントがもらえるため、児童が課題へ集中し、プログラム時間中は常に基本的なソーシャルスキルの訓練ができるようにしておられました。
 その他にも、絵カードを使った課題の提示や、ボードを使って刺激となる視界を狭める方法など、視野の狭さや注意集中の困難を特徴とするAD/HDの障害に合わせた様々な工夫や、学校・保護者と連携をとり生活場面での課題遂行の支援をしてもらうなど、SSTの効果を上げていく方法について教えていただきました。
 障害によってはSSTの実施が困難と思われることがありますが、先生のご講演を聴いて、支援者がその障害の特徴をよく理解し、障害に合った方法を工夫していくことでSSTの実施は可能であり、効果を上げられるのだと実感しました。

(滋賀県スクールカウンセラー 宮脇千恵)



分科会に参加して



[分科会1 入門SST]



和やかに進められた第1分科会の様子




[分科会2  病院のSST]

 今回の近畿SST経験交流ワークショップでは、私は、「分科会2 病院のSST」に参加させていただきました。ワークショップの前日は和歌山でも強い雨だったので、当日の天気が気がかりだったのですが、結局、雨上がりの澄みきった琵琶湖の風景が印象的な滋賀行きとなりました。
 私自身、SSTを担当していて陥りがちなのは、「本人が心から希望している、生活実感のある練習課題に導くことが出来ていない」という点です。例えば、陰性症状が強くて、1日のほとんどをベッドで過ごしている患者さんがいるとします。スタッフは、「簡単な挨拶でもいいから、少しでも他の人との関わりをもってくれたら」といった思い入れが強くなってしまって、その人の長期目標や短期目標を考えるときに、つい患者さんに「挨拶が出来るようになりたいですよね」と水を向けてしまいがちです。すると、おうおうにして患者さんは受動的な傾向が強いので、そうしたスタッフの「提案」を受け入れ、結果として当人にとっては特別やりたいわけでもない「挨拶が出来る」という目標が設定されてしまうということになるのです。
 今回の講義を聴かせていただき、生活実感のある課題にそった効果的なSSTを実施していくためには、事前のアセスメントを十分に行っておくことが大切なのだと強く感じました。日頃の実践では、アセスメントの不十分さがあるために、SSTの流れが滞りがちとなり、参加する患者さん方も楽しさを感じることが出来なくなっているのかも知れないのです。
 また、「SSTを担当するスタッフが孤立していて、組織的にSSTを活かす連携が出来ていない」「ローテーションでスタッフが異動するので、SSTの運営の維持がむずかしい」といった意見は、私が勤務している施設の状況とまるで同じです。「みんなも同じような事柄に取り組んでおられるのだ。私も、もう少し頑張ろう」という気持ちにしていただくことが出来た今回のワークショップでした。

(紀南こころの医療センター 杉若美智子)






[分科会3 地域生活支援のSST]

 分科会3では医療・福祉・労働等の様々な分野でSSTに取り組んでいる方、これから取り組みたいと考えている方々が知りたいこと・困っていること等、現場の苦労や苦悩を出し合い3グループにわかれて討議を深め、情報交換・知恵の交換を行いました。
 全グループに共通した悩みとして『動機づけを高める長期目標・短期目標の立て方や般化の工夫』があがりました。実際の事例場面のデモンストレーションを行い、川端先生や瀧本先生、そして当初予定になかった熊谷先生にも直々にスーパーバイズをいただいたり、べラック方式をわかりやすく解説いただき、課題やポイントの整理が具体的にできました。『目標立て』においては、○利用者のニーズ(得たいリビングスキルや復職といった長期目標)にあわせて、それができるようになるために練習できる“ソーシャルスキル”とは何かを具体的に伝えること、○そのためには能力や状況等をしっかりアセスメントしておくことが重要であること、『般化』においては○現実場面でのできたことに焦点をあて「ほめる」正のフィードバックが重要であること・・・等々、明日からでも取り組めそうな実践的なポイントが多く学べた有意義な分科会でした。

(滋賀障害者職業センター 古野 素子)






[分科会4 家族のSST]

 吉田先生の発達障害の人を抱えの単家族のSSTの中では、きれいな流れで問題解決技法を入れ、理論と実践がつながった瞬間だと感じた。それも家族と本人が一緒に考えるのではなく、各個人が目標を立て実践に移していくというやり方もあると知り、臨機応変に使っていきたいと思った。
 ロールプレイでは、吉田先生ならどうしたか、が整理されていて、とてもわかりやすかった。またADHDなどでは、視覚と聴覚でやっていくことを学び、実際にやってみて、さらにそれが必要なことを実感した。
 ボードや小物の使い方など、視覚に訴える工夫もこれから考えていこうと思う。
 上ノ山先生の統合失調症対象の家族SSTでは、家族の意見交換があり、ある意味興味深かった。「実際参加したとき、机の上に花があったら・職員の笑顔を見ればホッとする。来てよかったと思った。」等素直な意見を聞くことができた。もう少し家族の意見を参考にロールプレイできればよかったかとも感じたところもあった。職場・病棟でのSSTで困っていること等意見交換もでき、よい研修の場になった。

(大阪府立精神医療センター 川添 純子)






[分科会5 SSTの良さをどう伝えるか〜協同作業としてのSST]

 私がSSTに出会ったのは13年ほど前のことになる。こんなすばらしいものはないと、当時は様々なワークショップにこぞって参加したが、日々の相談業務に負われ、その後は文献を読んでは自己流で取り組む日々が続いた。今回久しぶりに参加したワークショップにて、再び自分の中のSSTへの情熱が再燃したのは言うまでもない。また自分の持っていた技法等のよきブラッシュアップの機会ともなった。
 角谷先生は、協働作業としてのSSTと題し、SSTチームとして組織で理解を得るための要点を教えて下さった。課題設定において、当事者のニードが置き去りにされ、とかく支援者のニードが優先されることに着眼し、スタイルや技法だけが先行する実践に警鐘を鳴らした。チームメンバー間で、まず「リカバリー・エンパワメント・ストレングス」という理念を共通して持ちえることの重要性を説いておられた。また、岩坂先生のご講演で用いられていた「あったか言葉」「ちくちく言葉」を連想するワークを早速取り入れられた。二種類とも日々の生活で誰もが思い当たる言葉であり、イメージしやすく、大変盛り上がったセッションとなった。このたびの学びを基に、同僚の先生方の理解を得て、今後大学での社会福祉士の養成教育の場面等で積極的にSSTを取り入れていきたいと考えている。

(同志社大学社会学部 野村裕美) 



SST普及協会近畿支部 ニューズレターTOPへ戻る


▲上へ


Copyright (c), サイト内の無断複製および引用を禁じます。